Vorhersage

イレギュラー、禁忌、愚行、背信行為。
この関係を、人は思いつく限りの言葉で謗り、罵る。

「言わせておけばいい」
「辛くないの?」

多くの人の上に立ち、世界を相手にしている彼はそれだけ多くの人の目に晒されているということ。
神さまの教えに背いたこの関係を理由に、いくつもの言葉の刃を受けているということ。
彼は決して言わないけれど、オレは知っている。
オレとの関係を公にしたとき、数えきれないほどの酷い言葉をひとりで浴びたことも。
自身が矢面に立つことで、差別的な嫌悪の目からオレを守ってくれていることも。

「お前は、辛いか?」

大きな掌で頬を包み込まれ、腰を屈めた彼のブラックサファイア色の綺麗な瞳にオレが映る。
泣きそうな顔をしている、と自分を冷静に見ているもうひとりの自分の声を聞きながら、彼に腕を伸ばした。
こつん、と額が合わさる。

「ハインのことを言われるのは、辛いよ」
「そうだな。俺もアルのことを言われるのは辛い」
「…でも、ハインはハインのこともたくさん言われている」

どれほど酷い言葉謗られ、罵られているのだろう。
強い心を持っていたとしても、少しも傷付かないはずがない。

「辛い…哀しいよ…」
「アル、」
「苦しいくらい、辛いのに…」

そう、きっと。
この胸の痛みを消す方法は簡単。
彼から、離れてしまえばいいのだ。
そうすれば、彼を言葉の刃から守ることができる。

けれど、オレは彼が傷付いていると知りながら、離れることができない。
この胸の痛みは消えるかもしれないけれど、彼を失ったら呼吸ができなくなると分かっているから。

「アル、よく聞けよ」
「?」
「見せつけてやればいいんだ」
「え…?」

何を、と続ける前に、彼は微笑を浮かべた。

「お前たちが否定しようが何と言おうが、俺たちは誰よりも幸福だ、と」

見せつけ、思い知らせてやればいい。
神に謀叛した愚かな人間であろうと、誰からも祝福されない関係であろうと、これほどに幸せになれるのだと。
お前たちには触れることさえできない本当の幸福が、この両の掌にはあるのだと。
胸を張って見せつけてやれ。
彼はそう穏やかに続け、とても綺麗に微笑んだ。

「だから、俺から離れようとするなよ。お前を失ったら、俺は呼吸もできなくなる」

あぁ、ほらまた。
辛くて哀しいのに。
彼を傷付けたくないのに。
彼はそれを全て抱擁して、そんな優しい言葉で許してくれる。

「言わせておけばいい。いつかの復讐のために」
「どんなに辛くても?」
「アルはひとりじゃない。俺がいるんだ。大丈夫だろう?」
「…そっか、そうだね。うん、大丈夫」

本当は何が大丈夫なのか分からないけれど、彼がそう言うならばそうなのだろうと思う。
絶対的な存在で、絶対的な言葉を持つ彼が、そう言うのだから。

「俺がこの世界の分までアルを愛してやる」
「オレも、この世界の分までハインを愛したい」

  よく見ているがいい、神の予言の書には記されていない結末を見せてあげるから


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大企業のトップのスキャンダルにメディアが騒がないはずがない…と今更気付き、そのうち長篇で書こうと決意したある日の午後。

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