スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://storiaeterna.blog10.fc2.com/tb.php/255-18ce607f

それは、ある日常の「物語」 #10

「おかえりなさい」

内側から開けられたドアの向こうから、そんな言葉で迎えられる。
少しずつだが、確かに日常になりつつあるその光景。
だというのに、いつまで経っても慣れない。
自分の帰りを誰かが待っているという事実に。
その事実に心地良さを感じている己自身に。

「…ただいま」

言い慣れない言葉をぎこちなく返し、気恥ずかしさで居た堪れない気分にもなる。
だが、真っ直ぐに向けられる笑顔に不思議と心が満たされていく。

「今日のディナーはね、ボロネーゼだよ」

自分を待つ存在に、笑顔で迎え入れられる。
明るいリビングには、温かい食事が並んでいる。
誰かと、同じ時間を過ごす。
そんな非日常が日常になりつつあることに、まだ慣れない。
だが確かに、歓喜を覚える。
込み上げてくるのは、彼と出逢わなければ一生知ることのなかった感情。
幸福、と呼ばれる温かなものが、胸を満たす。

「幸せだ」

覚えたばかりの、単語。
使い方を知らなかった、言葉。
しかし、紡いでみれば存外にすらりと唇が動いた。

「オレも幸せだよ、ハイン」

眩しいほどの、美しく愛らしい笑みが浮かべられ。
あぁ幸せだ、と心が震えた。

  だからこの出逢いを、奇蹟と呼んでもいいですか?

__________


彼を、護りたいと思った。
愚かな人間に深く傷付けられてもなお、人間を愛することができる彼を。
弱くも強く、決して穢されることのない光を宿す優しい最愛の彼を。
その笑顔が翳ることがないように護りたい、と。

「ハイン」
「どうした?」
「うん、大丈夫だよ」
「……」
「大丈夫。ハインにはオレがいるから大丈夫」
「……アル…」
「世界中が敵になっても、オレだけはあなたの味方だよ」

何を賭けても彼を護りたい、と思った。
だが、背後から抱きしめてきたその腕の温もりに、思い知る。
あぁ。
あぁ、彼はやはり、人間を愛することができる優しい天使だったのか。
純白の翼を奪われてもなお、癒しを与える天使。

「辛いときや苦しいときは、オレが抱きしめてあげるから大丈夫だよ」

護られていたのは。
俺だった。

  力の限り、命の限り、ぼくはあなたの幸せを願います

__________


軽く握った拳を口許に寄せて、くぁ、っと小さな欠伸を零す。
その無防備な姿はまるで、日向ぼっこをしているライオンのようで。
あまりにも彼らしくて、くすくすと笑ってしまう。

「ふふ、眠たくなっちゃった?」
「あぁ、ここは日当たりがいいからな」
「そうだね」

ぴったりとくっついているから、それでなくともお互いの体温で暖かいのに。
リビングに燦々と降り注ぐ柔らかな陽光のおかげで、オレと彼の周りには春の陽だまりができている。
うん、これで眠くならない方がおかしいね。

「膝枕か抱き枕、どっちがいい?」
「…抱き枕で」

逞しい腕が伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられる。
そのままソファに横になった彼は、オレのお腹に顔を埋めるような体勢になった。
擦り寄ってくる仕草が、懐いた獣が甘えているようで可愛い。

「良い夢を」

漆黒よりも深い黒髪をさらりと撫でれば、すぐに寝息が聞こえてきた。
オレだけが見ることのできる、彼の無防備な顔。
あぁ、何て愛しいんだろう。

「オレの愛するハインリヒ…」

少しでも、この愛しさが伝わるように。
伝わりますように、と願いながら。

「夢の中のあなたのことも、愛しています」

指先で前髪を払い、露わになった額にそっと唇を落とした。

  ありったけの言葉を掻き集めて、君へ届けたい。この、愛を


#11


web拍手 by FC2



スポンサーサイト
管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://storiaeterna.blog10.fc2.com/tb.php/255-18ce607f

  


  一行の物語(1h毎に入替)

頁の外にある物語(小話部屋)

小ネタブログ[eterna allegato]

もう1つの物語(創作BL小説)

創作物語の別巻ブログ[arcobaleno]

  「物語」の頁を繰る人々

  

Designed by

Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。