誰かについて座談会 70,000colpire記念

「ボス、失礼します」
「追加の書類か?」
「いえ、脅迫状が届いたのでお持ちしました」
「は?」
「“私からの手紙を受取拒否とはいい度胸だ”とありますが…」
「…他には、何と書いてある?」
「“嫁を誘拐されたくなければ、同封した質問に答えよ。さもなくば…お前の恥ずかしい過去を暴露してやる”だそうです」
「何だ、それは」
「ボスの過去を暴露…ですか」
「過去ねぇ…俺の過去を暴いて、何が楽しいんだか」
「人間として如何なものか、という過去しかありませんからね」
「……」

「失礼します、ボス。あ、フルアさんもこちらにいらっしゃいましたか」
「どうしました?」
「俺のパソコンに変なメールが届きまして…」
「今度はメールか…。それで、内容は?」
「はい。これです」
「“長期出張で僻地に飛ばされたくなければ、上司の嫁とその主治医を拉致って来い”?」
「これって、アルフレード君とドクターのことですよね?」
「…あの野郎、手段を選ばなくなってきたな…」

「だ、誰のことですか?」
「作者ですよ。ボスにも脅迫状が届きました」
「脅迫状…それは、また…」
「自分の言うことを聞かなければ、ボスの恥ずかしい過去を暴露するそうですよ」
「はぁ…ボスの過去ですか」
「ボスの過去など、面白くないことこの上ないでしょうに」
「お前な…っと、アルからメールだ」
「まさか、アル君のところにも…」
「…みたいだな。ドクターとこちらに向かっているらしい」
「ドクターもですか?」
「あぁ。全く、作者だからと言って調子に乗ってやがる。そろそろ、本気でシメた方がいいかもしれないな」

「それで、今回はどのような座談会ですか?」
「同封してあると書いてあったな。あぁ、これか」
「何て書いてあるんですか?」
「“今回は、《誰かについて座談会》をしてください”だと」
「誰か、とは?」
「指定はないようだ。好きなように決めていいんじゃないのか」

「あ、いたいた。お邪魔します」
「アル。早かったな」
「うん。会長さんが迎えに来てくれて、ここまで車で送ってくれたの」
「会長?」
「びっくりしちゃったよ。会長さんと先生が一緒にいるんだもん。あ、フルアさんとグラースさん、Ciao」
「こんにちは、アル君」
「ドクターもお久しぶりです」
「おぅ。いやぁ、お前さんの上司は面白い人だなぁ」
「何故、会長が…」
「さぁ?何でも、孫の可愛い姿を見せてもらう条件と引き換えに俺たちを迎えに来たと言っていたが」
「…あの野郎…」
「うん?」
「…アル、いいか。あざさを見かけたら全力で逃げろ。石でも何でも投げつけていいから、逃げろ」
「え、ど、どうして?」
「どうしてもだ。逃げろよ。分かったか?」
「う、うん…分かった」

「おい、どういうことだ?」
「恐らく、あざさがアル君を餌に会長を釣ったのでしょう」
「会長はアルフレード君のことを実の孫のように可愛がっておられますからね」
「あー、なるほどな」

「はぁ…あの脳内常春野郎の思うままになっているのは気に喰わないが、やるか」
「何をやるの?」
「お前、何も知らされないまま会長に拉致られてきたのか…」
「うん。ハインが呼んでいるよって言われただけ。先生は何か聞いていますか?」
「俺は、“息子自慢をしたくありませんか?”ってメールが来たが、詳しいことは何も聞いていない」
「……本気であいつをシメたい」
「どうやら、私たちが誰を議題にするか読まれていたようですね」
「まぁ、この面子が揃えば誰を選ぶか分かりきっているがな…」
「うん?なぁに?オレの顔に何か付いてる?」
「いや、可愛い」
「……っ」
「今から照れていたら身が持たないぞ。今日は、お前が主役だ」
「主役?な、何?どういうこと?」
《誰かについて座談会》をしろ、だと」
「誰かについて…?」
「あぁ。指定はなかったから、アルについて話すぞ」
「えー、どうしてオレなのー。恥ずかしいよ」

「他の奴について話してもつまらないから」
「他の者では華がありませんからね」
「このメンバーでは必然かと思います」

「言い切った…」
「俺も同上で賛成だな」
「せ、先生まで!?」
「正直な話、この中で全員と平等に付き合いがあるのはアルフレードだけだろう?」
「んー、あれ?そういえば、そうですね」
「俺には、そこの秘書や護衛について話せるだけのネタがない」
「あ、そっか…」
「そういうことだから、始めるぞ。おいで、アル」
「うん」
「ドクターもこちらへどうぞ」
「おぉ」

「じゃぁ、とりあえず1問目からいきますか?」
「そうですね。では、みなさん。アル君について答えてください」
「あぁ」
「何でもこい!」
「ほどほどでお願いします…」




[01] 彼の第一印象について

F「王道な質問ですね。では、まずはボスからどうぞ」
H「第一印象か…どれを第一とするかが問題だな」
A「どういうこと?」
H「アルを路地で見つけたときか、眠っていたときか、目が覚めたときか」
A「第一印象って、普通は一番最初にその人を見たときのことじゃないの?」
H「まぁな。だが、アルの場合は意識がなかったからな」
F「意識のあるなしで印象は変わるものですからね」
A「そんなに違うの?」
H「いや、アルの場合はそう大して変わらなかった」
A「じゃぁ、最初にオレを見つけてくれたときは?」
H「天使が誤って堕ちてきたのかと思った」
A「え?」
H「眠っているときは天使を象ったビスクドールのようだと思い、目が覚めたときにやはり地上に堕ちてきた天使だと確信した」
A「……き、聞かなければよかった…恥ずかしすぎる…」

G「フルアさんはどうだったんですか?ボスがアルフレード君を保護したとき、傍にいらしたんですよね?」
F「私も一瞬、人間だと思えませんでした」
G「それは、どういう意味ですか?」
F「あまりにも儚く、脆弱な気配で…」
G「アルフレード君が、ですか」
F「えぇ。それこそ、触れた瞬間に消えてしまうのではないかと思いました」
G「……」
F「ボスは堕ちてきたと仰いましたが、私は堕とされた天使だと思いましたね」

D「堕とされた、か。確かに、そうかもしれないな」
G「少年だった頃のアルフレード君のことですね」
D「あぁ。あの子は無理矢理羽をもがれて、地上に堕とされたようなものだ」
G「…堕とされた、ですか」
D「それくらい、ボロボロに傷付いていた」
F「それでも不思議と、弱いだけの存在には見えませんでした」
D「ふっ、そうだな。俺もだ。ボロボロなのに、この子はまた歩き出せるって信じられる何かがあった」
F「えぇ。アル君が庇護に甘えるだけの子であれば、私はボスの伴侶としてこれほどに無条件に受け入れることはできなかったと思います」

G「…そうか。俺が感じたものは、間違っていなかったんですね」
D「ん?」
G「俺はお2人とは違って、アルフレード君を初めて見たのは写真でしたから」
D「そうなのか」
G「はい。ちょうど国外にいましたし。ボスから、有事の際は自分よりも優先して護るように、と」
F「全く、ご自分の護衛にとんでもない命令をする方ですね」
D「くっく、あいつらしい。で、お前さんのアルフレードの第一印象はどうだったんだ?」

G「戦うことを知っている瞳をしている、と思いました」
F「それは、軍人としての審美眼ですか」
G「そんな大げさなものじゃないですよ。ただ、」
F「ただ?」
G「幾度となく絶望を見てもなお希望を失っていない瞳だ、と思ったんです」
D「なるほど。それはアルフレードの強さそのものだな」
G「えぇ、本当に。心の強い子だろう、と感じた俺は間違っていなかった」


[02] 最近の彼についてどう思いますか?

H「出逢った頃よりも遥かに良い顔をするようになった」
D「あぁ、本当に」
F「あの笑顔にどれほど癒されているか」
G「そこに居てくれるだけで和みますよね」

A「い、一斉に見られると恥ずかしいよ…」
H「その顔も可愛い」
D「お前はどの表情も可愛いが、照れている顔は別格だな」
H「よく分かっておられる」
A「そんな恥ずかしいことで意気投合しないでよ」

H「よく、笑ってくれるようになったな」
A「え?」
H「本当の笑顔だ。俺は、それを護りたい」
A「ハイン…」
H「これほどに強く、何かを護りたいと思えたのは、出逢ったのがアルだったからだ」

F「ボスの仰る通り、アル君は本当に良い顔をされるようになりました」
G「俺はアルフレード君と直に接するようになったのは随分と後なので、最初の頃をよく知りませんが…そんなに変わったんですか?」
F「えぇ、それはもう。第一印象が変わることはありませんでしたが、雰囲気は大きく変わりましたね」
G「たとえば、どう?」
F「強いて言うなら、“安心”でしょうか」
G「安心?」
F「出会ったばかりの頃は、どこか警戒しておられました。手負いの小動物のように…」
G「今は?」
F「今は、傷を癒すための場所を得たことで、安心した雰囲気を纏っておられる」

D「よく見ているな。さすが、あれの右腕だ」
F「ドクターにそう言っていただけるとは、光栄ですね」
D「あいつはさ、アルフレードを懐にすっぽり入れちまっているから、誰よりもあの子と同調できる」
F「えぇ」
D「だが、時にはお前さんのように客観的な視点を持つ人間も必要だな」
F「…いいえ、ボスも失ってはいませんよ。今も、アル君のことを深く、時には客観的に見ておられる」
D「あれで?」
F「えぇ。過ぎる感情移入は諸刃の剣だ、と言っておられました」
G「同調し過ぎれば、何かしら見落とす可能性がありますからね」
F「感情的になれば、それだけ冷静な判断が鈍る」
D「…そうか。アルフレードが探していたのは、あいつだったんだな」
G「はい?」
D「出逢ったのがあいつでなければいけなかった。つくづく、そう思うぜ」
F「そうですね。私もそう思います」


[03] 正直、彼をどう思っていますか?

H「愛している。最愛の伴侶だ」
D「大切な息子だな」
F「慕わしい青年です」
G「可愛い弟のような存在です」

A「…これ、すごく面映ゆい…」
H「“正直”と言われたからな。正直に答えたまでだ」
A「それ、何か解釈が違う気がするよ…」
H「そうか?だが、お前に偽りの想いを抱いたことがないからな。正直も何も、いつだって真実だ」
A「う、うん…ありがとう?」
H「何故、疑問形なんだ?」
A「や、何と言えばいいのか分からなくて…」
H「そういうところも可愛い」
A「もー、ハインの言葉は真実だって分かっているから、余計に恥ずかしいんだよ」


[04] 彼の、どうしても理解できない点は?

H「アルの理解できない点か…」
A「何かある?」
H「そうだな。全て分かってしまったら、お前を想う楽しみが減るな」
A「え?」
H「今日は何が食いたいだろうか、どんな夢を見ているのだろうか、どこか行きたいところはないだろうか…。そう考える時間も楽しいものだと知ったからな」
A「あ、そっか。全部分かっちゃったら、つまらないね」
H「だろう?アルの食いたい物や行きたい場所を考えるのも醍醐味だからな」

D「って言っているが、あいつはエスパーか!って思うときがないか?」
F「あります。つい先日も、アル君がボスを呼んだだけで何を欲しているのか的確に言い当てていました」
G「でも、それってアルフレード君もですよね」
F「…確かに。むしろ、アル君の方がボスのことをより理解されておられますね」

D「あ、この前のことなんだけどよ、」
F「はい?」
D「あいつに電話がかかってきて、しばらく喋っていたんだ。で、不意にアルフレードを見たんだ」
F「えぇ。それで?」
D「それだけ。見ただけ」
G「は?み、見ただけって、ジェスチャーとかは?」
D「ないない。しかも、見つめたんじゃなくて、ちらっと一瞥しただけだ」
G「一瞥しただけ…」
D「そう。あいつはすぐにパソコンを開いていたからな」
F「それで、見られただけのアル君はどうしたんですか?」
D「そう!そこからが驚きだ!」
G「アルフレード君はどうしたんですか?」
D「迷うことなくメモ帳とペンを持って、あいつのところに持って行ったんだ」
G「目が合っただけで、ボスが何を欲したか分かったということですか」
D「そういうこと。アイコンタクトなんてレベルじゃねーよ、あれは」
F「度々、そういった場面を目撃したことがありますが…確かに、あれは不思議です」
G「ボスとアルフレード君はテレパシーでも使えるんですかねぇ」
F「永遠の謎ですね」


[05] 普段言えない彼の文句、悪口はありますか?

H「あるわけないだろうが」
D「そんなことを言う奴がいたら、いつでも俺のところに連れて来い」
F「その前に私のところに連れて来てくださいね。ドクターが治療し甲斐のある姿にしてあげますから。グラースが」
G「任せてください。薄皮だけを切るのは得意です」

A「は、はいん!先生とフルアさんとグラースさんが怖いよ!」
H「ん?」
A「当然だろう、っていう顔しないでー!」
H「あいつらのところに連れて行く方がまだ優しいだろう?」
A「優しくないよ!だって、何かすごく怖いこと言っているよ!?」
H「グラースもフルアも、手加減するさ」
A「そ、それはそうだと思うけど…」
H「俺のところに連れて来たら、間違いなくそいつは…」
A「え?何?ど、どうなっちゃうの?」
H「俺は手加減ができないからな」
A「……」
H「ドクターの出番はなくなるかもしれない」

A「…フルアさん、グラースさん。もし何かあったときは、お2人にお願いします」
F「えぇ、お任せください」
G「いつでも言ってくださいね」


[06] フリートーク

H「終わったか」
F「みなさん、お疲れさまでした」
G「コーヒーを淹れ直してきます。アルフレード君はケーキのおかわりはいかがですか?」
A「あ、それじゃぁ、いただきます」
G「すぐにお持ちしますね」

A「そうだ、ハイン!」
H「何だ?」
A「オレのために誰かを傷付けるのは、めっ!だよ」
H「アルのためだけというわけではないぞ。俺自身のためでもある」
A「それでも、誰かを傷付けるときはハインも傷付くでしょ?ハインが痛いのは嫌だよ」
H「アル…。ったく、お前は本当に堪らないな」
A「うん?」
H「お前が欲しい物は全て手に入れてやりたい」
A「え?な、なぁに?どうしたの?」
H「どんなに困難なものでも、手に入れてやりたいくらいだ」
A「?」

D「おーおー、相変わらずだなぁ」
F「おかげで、我が社は安泰です」
D「ん?何でだ?」
F「アル君と出逢ってから、我が社の経営状況はこのご時世に驚くほど良好なんです」
G「株価も上がっていますし、支社の状況も上々」
F「アル君は、傾国ならぬ繁栄の天使と呼ばれているんですよ」
D「内助の功ってやつかぁ」
F「えぇ、本当に。アル君なくして、今のボスはありません」
G「そして、俺たちも」
D「俺もだな。救ったつもりでいただけで、救われたのは俺の方だった」

A「せんせっ」
D「お!?ど、どうした?」
A「今、ハインとご飯食べに行こうって話していたんです。先生も一緒に」
D「お、おぉ」
A「フルアさんとグラースさんも」
F「私たちもですか?」
H「急ぎの書類は終わらせてある。お前たちも、特に急ぐ仕事はないだろう?」
F「えぇ。今日はボスに書類を片付けていただくだけでしたので」
H「それなら、問題はないな。アル、何が食いたい?」
A「オレ?んー、たまにはみんなが食べたいものにしようよ」
H「俺たちにそんなものがあると思うか?」
D「お前と一緒に、ということだけが重要だからなぁ」
G「アルフレード君が美味しそうに食べているのを見ながら食べるから楽しいんです」
F「そうですよ、アル君」

A「じゃぁ、この前連れて行ってくれた創作料理のお店でもいい?」
H「あぁ、あそこか。いいぞ」
A「それでね、」
H「何だ?」
A「えっと…あのパフェ、頼んでもいい?」
H「ふっ、それが目当てか」
A「だ、だってハインと2人だと食べ切れないでしょ?でも、みんなでなら大丈夫かなって」
H「そうだな。食い切れない分はグラースにやればいい」

G「ボス、この人数でも食い切れないようなパフェなんですか?」
H「…まぁ…とりあえず、今日はドクターがいるから安心しろ」
G「え?それはどういうことですか?」
H「胸やけに効く薬くらいは処方してもらえるだろう」
G「……が、頑張ります」
D「忠犬具合にも磨きがかかってきたなぁ」
F「それもアル君のおかげですよ」

H「アル、お前はちゃんと飯も食えよ。デザートはその後だ」
A「むー」
H「そんな可愛い顔をしても駄目だ」
A「だって、パフェ食べられなくなるもん」
H「食いたいというよりは、あの大きさのパフェを見たいだけだろう?」
A「ぅ……」
H「食える分だけ食って、後は残せばいい。あいつらが食うから」
D「…お前さんも頭数に入れられているぞ」
F「アル君の笑顔のためならば、この身を惜しむつもりはありません」
D「お前さんもそこの忠犬のことを言えねぇな」

H「ドクターもいるしな」
A「うん」
D「って、俺も頭数の1人かよ!」


パフェよりも甘く、蕩けるように愛され、愛し、愛されている物語。
たまにしょっぱいときやカライときもあるけれど。
パフェを食べたときのように、ほんのり優しくて甘い気持ちになってもらえますように。
感謝と愛を込めて。


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