Präzision

「本気ですか?」

思わず問えば、首肯が返された。
自嘲でもシニカルなものでもない微苦笑を浮かべて。
そこにあるのは、戸惑い、躊躇、僅かな期待と希望。
あぁ、何て人間臭い表情だろうか、と思う。

「お前が付き従うと誓った男は変わった」

過去の自分とは違う。
そう言外に告げる眼差しを受け止め、私は妙な既視感に襲われた。

いや、これは違う。
これは、高揚感だ。
お前の全てを捧げろ、と不遜に言い放った男と対峙したときのあの心の高鳴り。

己の全てを捧げ、向き合いたいと渇望させる“何か”を探していた。
その“何か”の正体を。
“何か”、“何か”と。
探し求めていたその“何か”。
それを見つけた、と心が叫ぶ。

「それでも変わらずに、付いてくるか?」

偽りの忠誠心など要らない。
射抜くような鋭い眼差しが、そう言う。
私はそれを受け止めながら、自然と口許が緩むのを感じた。

「私を見くびらないでいただきたいものです。あなたを選らんだのは、紛れもなく私自身です」
「……」
「あなたの変化もまた、私にとっては良きものです」
「…この関係は決して祝福されるものではないにも関わらず、か?」
「世間一般的な善悪など些細な問題です。ボスがそれを良しとしたのなら、たとえ悪であろうとも、私には善となります」

これは、盲目的な忠誠心ではない。
確信だ。
厳しく険しく、万人の祝福を得られない翳多き道へと歩み出した己の主に対する、絶対的な信頼。

「兵のために涙を流せない王は滅びるものだと歴史が証明しています」
「……」
「民を愛せない王は、兵からも愛されることはないでしょう」
「……」
「あなたもこれで、ようやく人間らしくなったということではありませんか」
「…言ってくれるな」

くっく、と小さく笑う主に、改めて思う。
あぁ、ようやく見つけた、と。

「誰かを愛することを覚えた王は強くなるでしょう。私は、それを見てみたい」

誰かの為に、強く。
自分の為に、強く。
きっと、彼はこれから先、靭くなる。

「相手は同じ男だ。まさか、と何度思ったか…」
「以前、心が求めている、と仰っていましたね」
「あぁ」
「そういう存在は、誰もが出逢えるものではありません」
「…あぁ。そうだな」

出逢えたんだな、と。
誰に言うでもない言葉がぽつりと落ちる。
その音の穏やかさに。
あまりにも優しげなその音に。
心臓が痛む。

あぁ、変わったのは彼だけではないのか。

「誰かの幸福が、これほどまでに愛おしいと思うとは…」

乾いていた心が、何かで満たされる。

「私は今もこれからも変わらず、ボスの臣下であることを誓います」

誰にとっても平等でなければいけない冷酷な王。
けれど、例外はどこにでも存在する。
独りで戦うことしか知らないこの王にとっての唯一の例外はきっと、彼にとって光となるのだろう。
そうして光を見つけた彼が、どんな道を歩んでいくのか。

見てみたい、と心から思う。
自分を見限るのならば今だ、と臣下に選択肢を与えるこの優しい主の未来を。
いや、孤高で孤独だった彼が、心から愛するあの青年と歩む未来を。

「出逢うべくして出逢ったのです。そんな2人が祝福されないと言うのなら、私は何を敵にしてもいい」
「フルア…」
「誰が何と言おうと、私は祝福します」

主が剣を握るなら、盾に。
主が盾を取るなら、剣に。
それが、私の誓い。
そして、確信。
私にとってそれが最も正しい選択だ、という。

「願わくば、多くの祝福があらんことを」

信じてもいない神に、そう願う。
その願いが叶うことを、確信しながら。

  精密な計算の元で出逢った者達に声が枯れるほどアレルヤを叫ぼう


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***
何だかんだでこの秘書も相当だと思う。
「自分が選んだ人だから間違いはない」って言い切っちゃう人だもの。

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たにこ

村の新着を見て、雄叫びをあげてしまいました。
ハインだ~新作だ~!!

すみません、ちょっと喜びのダンスを踊ってきます
((o(^∇^)o))

03

16

22:01

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