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Regression

たとえば、会いたい人が居て。
その人に会うことができたとしたら、それはとても幸福なことなのだと思う。

「たとえ、その人に触れることができなくても」
「もどかしさに焦がれることはないのか?」
「焦がれて恋しくて慕わしさに胸が痛んでも、幸せだと思うよ」

決して手の届かない場所に逝ってしまった大切な人たち。
話したいことがたくさんあった。
聞いてほしいことがたくさんあった。
温もりに縋り、泣いてしまいたいこともあった。
それが、手を伸ばしても決して触れることのできない幻影だと知りながら。

「虚しくて、哀しくて…会いたい、と何度も叫んだ」
「……」
「でも、この手もその声も届かない」

あぁ、ならばいっそ、自分も彼らの傍に逝ってしまえば。
そう思ったことだって、何度もあった。
けれど、その度に温もりを感じた。
孤独に震える身体を抱きしめ、恐怖に蹲る背中を撫で、虚無に向かう心を呼び止める温もりを。
もう二度と触れることができなかったはずのそれを。
確かに、感じた。

「そのときに、気付いたんだ。あぁ、会いたい人にはいつだって会えるんだって」
「いつだって?」
「そう。いつだって会えるんだよ。心が死んでしまわない限り、いつだって」

会いたいと思う大切な人たちは、手の届かない場所に逝ってしまった。
触れることはできない。
けれど、その温もりや眼差しや温もりや優しさは、消えはしない。
オレの心に刻まれ、今も生き続けているのだから。

「だから、会いたいときはいつだって会えるよ」
「…それでも、お前を抱きしめることはできない」
「それなら、抱きしめてあげる」

込み上げてくるものを無理矢理堰き止めているかのように、眉を強く寄せている彼を抱きしめる。
彼の心に、オレのこの腕の感触が、この身体の温もりが、刻まれますようにと祈りながら。

「会いたいときは、いつだって会えるんだよ」

噛み殺し切れずに零れた濡れた吐息には気付かない振りをして、彼を強く抱きしめる。
そうして、オレもまた彼の両腕に強く抱きしめられる。
まるで、最期の抱擁のように、強く強く、深く。
あぁ、本当にこのまま世界が終わってしまえばいいのに、と思う。

何度生まれ変わって、姿形も考え方も全く違う他人になってしまったとしても、オレがこの世界で“会いたい”と渇望するのは彼だけなのだ。
そんな人の温もりに包まれて迎える終焉は、とても穏やかで、とても幸せなものだろうと思う。

「ハインは、オレに会いたいと願ってくれる?」
「当然だ。この世界とは違う遠い世界のまだ誰も知らない惑星に生まれたとしても、俺はアルに“会いたい”」

記憶の中にある温もりに縋り、名前も知らない誰かを求め、永い永い旅路に出ることも厭わない。
一度の生で再会できなかったとしたら、次の生でも、その次の生でも。
見つけるまで、探し続けよう。
出会った人々を捨て、出会うはずだった人々を捨て、何もかもを捨てて。
会いたいのは、お前だけなのだから。

強く強く抱きしめてくれる彼はそう言い、一層強くオレを抱きしめた。
心臓の音が重なり、呼吸が混じり合う。
全てを捨てて、どんな痛みにも耐え、永い旅路も畏れずに、会いたい人。

会いたい人に出逢えた幸福が、津波のように容赦なく押し寄せてくる。
胸の中が、満たされる。
満たされ、溢れていく。

「ハイン、ハイン…だから、どうか…手が届かないほど離れてしまったとしても、オレを忘れないで」
「忘れるものか。これほどに愛しい存在を、忘れられるはずがない」

会いたい人に出逢えた幸福と、会いたい人に再び出逢える歓喜。
世界の中でただひとりの“会いたい人”がいる事実と再会の確信。
今はもう触れることはできないけれど、いつだってその温もりが傍にあることを教えてくれた大切な人たちへの感謝。
その全てが心から溢れ、瞳から零れた。

  後退的論証によって導かれた揺るぎない真実にひれ伏すがいい


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***
いつか必ず別れは来るものだけれどその喪失は死に等しいものでどうすればいいか分からなくなった旦那を励ます嫁の図。

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