頁のない物語 #03

「ハイン、めっ!」

「…と、アルに叱られたんだが…あれだな、地味にダメージ食らうな…」
「……」
「もう俺は絶対にアルに隠し事はしない」
「良い心掛けです(さすがアル君。ボスにここまで反省させるとは尊敬しますね)」

*長篇「愚か者たちよ、恐れる事勿れ」7話より

__________


「先生、Buon compleanno」

「って言いながら頬にちゅーしてくれる夢みたから、プレゼントはそれでいいぞ」
「ダメに決まっているでしょうが。代わりに俺からプレゼントです」
「何だこの紙…ん?“ヴァージンロードをアルと歩ける権利書”だと!?」
「要らないなら返してください」
「要るに決まっている!!よし、アルフレード!式場の見学行くぞ!!」
「変な権利書作らないでよハイン…って言うか式なんて挙げませんよ、先生……」

__________


ハインの瞳は綺麗だ。
ありふれた表現だけれど。
それ以上に相応しい言葉がないから、綺麗だとしか言えない。
深い深い、サファイアのような色。
地球が育てた宝石のような。
惑星が生んだ海のような。
神秘的な色。
その絶対的な包容力は、温かくて、優しい。

「アル?」
「うん、綺麗だね」
「…見つめられたら」
「?」

「キスの合図、だよな」
「え……?」

__________


どんな人ごみの中からでも。
どんな深い樹海の中からでも。
絶対に、お前を見つけ出してやる。
この世界で出逢ったのだから、俺には容易いはずだ。

「必ず…必ず見つけてやるからな、アル…ッ!!」


「ハインーッ!ここどこー!?迷ったぁぁッ!!」

__________


この哀しみから救ってくれるのなら、誰でもいいって思っていたのに。

「俺が、お前の手を掴んでいてやる」
「…うん」

誰でもいいから助けて、って思っていたのに。

「だから、大丈夫だ」
「うん」

あなたじゃないと、ダメだったんだね。

__________


「また来るね。母さん、父さん」

たくさん心配かけて、ごめんなさい。
7年前は、泣いてばかりだったよね。
でも、今はちゃんと心から笑えるよ。
だから、オレはもう大丈夫。

「だって、愛する人がいるんだもん」

オレが一番好きな笑みを浮かべる彼に、ほわんと心が温かくなった。

母さん、父さん。
オレ、今こんなにも幸せです。
来年もその次も、彼と必ず来ます。
だから、どうか天国から見守っていてください。
来年の夏まで、Arrivederci!

*長篇「白い花束をカルバリアに」6話より

__________


「ちゃんと、ハインに見つけてもらえるかな」

世界地図を見ていたら、その広さにちょっと不安になった。
次は、どこに生まれるかわからないから。

「1.3cmだ」
「え?」

彼の手には、コンパス。
くるり、とそれで世界地図の上に小さな円を描く。

「1万kmを1cmとして縮尺してみろ。地球など、小さいものだ」

この中から見つけるのは簡単だ、と。
描いた円を指で叩き、笑う。

「1.3cm…」
「小さいだろう」
「うん。これなら、見つけてもらえそう」

当然だ、と言い切る彼の笑みに、不安は消えた。

__________


「アルフレード、遊びに来たぞー」
「わぁい、先生だぁー」
「よしよし、今日も可愛いなぁ。土産の桃の花とひし餅だぞ」
「ひしもち?あ、ひし形をしているからですか?」
「ジャッポーネ伝統の節句行事の供え物だ。美味いぞー」

「桃の節句を祝ってどうするんですか…アルは男ですよ」
「娘…もとい、息子を可愛がる日じゃねぇのか?」
「お菓子食べて、甘いお酒を飲む日じゃないの?」

「(アルの微妙に間違った知識はこの医者のせいか!)」

__________


1枚、また1枚と増えていく写真。

「随分増えたな」

山になっていた写真を整理していると、ハインがオレの手元を見ながらしみじみと言う。
この何百枚あるかわからない写真は、全部彼が撮ったものだ。

「新しいアルバムを買わないとね」
「そうだな」

アルバムのページが増える毎に、彼と過ごす時間は減っていく。
それでも、増えたページに幸福を感じるのは、きっと。

「いつか部屋がアルバムで一杯になっちゃうかもね」
「そうなるといいな」

きっと、このページが全部愛しいものだから。

__________


あなたに愛されることを知ってしまったこの躯は、浅ましいくらいにあなたを求めてしまう。

「アル、どうしてほしい?」

そんなこと分かりきっているのに。
わざとオレに言わせるんだから堪らない。

「アル?言ってごらん」

あなたは、ズルい。
オレがその表情に、その声に、逆らえないことを知っているくせに。
わざと、そう問うのだから。

「…ハイン、が…」
「俺が?」
「ハインが…ほし、い…」

ほらね。
オレは、あなたに逆らえない。

だって、あたなが欲しいのは、本当だから。



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