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頁のない物語 #11

いつも傍に在った温もりがなくなった時。
ようやく、お前が居なくなったことに気が付いた。
あぁ、お前はもう居ないんだな。
そう思ったら、途端に自分の隣を冷たい風が吹き抜けていった。

「…痛い……」

そして、その風の冷たさに。
ひどい喪失感に。
どこが痛いのか分からないほどの激しい疼痛に苛まれた時。
自分だけが生きていることを、突き付けられた。

*ドクターと亡き恋人

__________


持ち得る全てを賭けて。
たった1人の存在を、ただただ純粋に。
ひたすら、真摯に。
労わり、慈しみ、慕い、愛おしむ。

「アル」

俺の存在意義そのもの。
俺という命を生かす唯一絶対の存在。

「Ich liebe dich immer und ewig.」

一体、誰に想像できただろう。
ひどく胸が痛むほどに。
これほどに、際限なく想うことのできる存在と出逢い、愛し合えることを。

__________


午後の柔らかな陽光が降り注ぐ、リビングのソファ。
悪夢に怯えて眠れなかった彼が。
悪夢を恐れて眠ることを拒絶していた彼が。
そこにすっぽりと収まり、穏やかに眠っていた。

「良い夢を」

微かに笑みの形を象っている唇に、そっと触れる。
あぁ、胸が痛い。
彼のあどけない寝顔に、穏やかな吐息と確かにある体温に。
歓喜と幸福で、胸が痛む。
その痛みを言い訳にして、思わず泣きたくなった。

__________


お前が好きな季節のフルーツや花が並ぶ、マーケット。
お前が好きな海を見下ろす高台にある、バール。
お前が好きな石畳の坂道の頂上に建つ、教会。
お前が好きな音楽と色に溢れた、部屋。

「……」

見慣れた風景にふと違和感を覚えて、何故だろうと思って。
そうしたとき、俺は改めて思い知る。

「…あぁ、お前が…」

隣に、愛する人が居ないからだ、と。

*ドクターと亡き恋人

__________


雨が大地と謳う。
風が木々と踊る。
花が陽光に綻ぶ。

「ハイン、虹だよ。空が嬉しそうだね」

お前と過ごす午後。
あぁ、世界とはこれほどに賑やかなものなのか、と気付かされた。

*終戦記念日(2日遅刻)争いが続く世界はそれでも美しいのだと誰もが再認識できる日…だといい。

__________


喪った“昨日”。
手に入れた“今日”。

「誰、か…誰でもいいから……」

“今日”なんて要らなかった。
たとえそれが、誰かが願った未来だとしても、この手には要らなかった。
だから、どうか。
“昨日”を、返してください。

__________


テレビも新聞も、伝えるのは哀しいニュースばかり。
世界は醜く、残酷なものなのだと突き付けられる。
けれど。

「庭園のレストランがリニューアルしたらしいぞ。行ってみるか?」

残酷な現実を伝える文字の中から、彼はいつも必ず見つけてくれる。
見落としてしまいそうな小さなことでも、必ず。
だから、安心できる。
哀しくて辛くて嫌なことばかりではない。
それだけではないから、大丈夫だ、と。

この世界は、存外に輝いていて綺麗で優しいものだと。
あなたがいるから、そう思えるようになった。

__________


「泣いてあげよう。その人が生きていたことを忘れないために」

救えなかった命の重さと無力感に押し潰されそうな夜。
お前は綺麗な涙を流しながら、抱きしめてくれた。

「その人のために、泣いてあげよう」

お前の腕の中は、俺が唯一、弱虫で泣き虫になれた場所だった。
それなのに…。
なぁ、お前が居なくなってしまったせいで、俺は泣くこともできなくなってしまったよ。

*ドクターと亡き恋人

__________


「まるで、子供だな」
「うん?」
「欲しいと思ったものを全て手に入れなければ気が済まない、ただのガキのようだ」

白い肌の上に咲き乱れる赤い花のひとつひとつに唇を寄せる。
己が刻み込んだ、己の欲望。
それでも、まだ満たされない、と空腹を訴えてくる。

「際限がない」

貪欲で傲慢な熱を持て余す。
だが、己の感情に振り回されるのも決して悪いものではない、と。
自堕落で幸福な時に、嘲笑ではない笑みを口端に乗せた。

__________


その幼い身体と心は、ズタズタだった。
目を逸らしてしまいたくなるほどの深い傷から、血が流れ続けていた。

「痛みすら感じられないことが、あの子にとってどれほどの痛みか…」

拒み、恐れ、拒み、いつしか麻痺してしまった感覚。
痛みも哀しみも寂しさも、その少年は感じていない。
感じられない。

「…残酷な……いや、あるいは…」

あまりにも過酷な現実の痛みを受け入れるには、少年は幼い。
その幼い心にとって、“感じない”ということは。
あるいは、救いだったのかもしれない。



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