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頁のない物語 #16

大切な人が居た。
何よりも、誰よりも大切な存在が。
そんな人を喪い、絶望した。
光を失い、闇が蔓延り、未来を見失った。

「それでも、諦めなかった。先生だけは、オレを諦めずにいてくれた」

希望はあると、諦めずにいてくれた。
あぁ、そう言って笑うお前こそが希望だというのに。
絶望に寄り添う、光そのものだというのに。

「だから、オレはオレを諦めずにいられた」

あぁ、この眩しい光。
大切な人を喪って潰えたはずの光は、今もまだ此処に。

__________


光差す丘に立ち、幼子は頬を濡らす涙を拭った。

「おそれるな…ゆうかんに、」

真新しい墓標を前に、首にかけた十字架を小さな掌で握りしめる。
その小さな背中が。
庇護されるべき幼いその雛の翼が。
とても大きく見えるのは、気のせいなのか。

「はばたくんだ。ぼくだけの、かみさまをさがすために」

新緑の丘を、穏やかな風が吹き抜ける。
それは静かでいて、しかし、幼い少年の身体には力強いもので。

「ぼくは、たたかうんだ」

小さな翼が向かい風を受ける。
この美しくも醜い世界へと果敢に飛び立つ、純白の翼に。

__________


過ちは繰り返され、今も世界のどこかで戦火が大地を焼く。
今から100年にも満たないまだ近い過去に、穏やかなこの空が硝煙に焦がされていたように。

「また戦争のニュース…」
「ここのところ、欧州も不安定だな」
「繰り返さなくてもいい歴史なのにね」
「懲りないと言うべきか、飽きずにと言うべきか」
「どうして、忘れてしまうんだろうね。大切な人が生きている場所だってことを…」

大切な人と生きる場所。
そんな大切な場所を、何故、人は自らの手で壊すのか。
大切な人が産まれ、生きているこの世界が、どうか。
どうか、細石が巌となって苔むすまで平和でありますように、と。
祈ることしかできないけれど。

「理想論だけれど、いつかこの祈りが届きますように」

__________


地上で祈り続ける天使の羽には、もう飛べる力が残されていなかった。
傷付き、血に汚れたその羽を癒す力も、術もなく。
それでも、「どうか」と他者の幸いを祈り続ける、健気で憐れで、美しい天使。

「あぁ、どうか…」

何の見返りも求めずに一心に誰かの幸いを願う心優しき天使に。
僅かばかりでも祝福を。

__________


神が人類に失望し、諦め、愛いさなくなったとき。
それでも。
希望を失わずに、諦めずに、誰かを愛し続けることができる人が居たとして。
世界が終焉を迎えようとしているその間際まで、不格好でも戦い続ける人が居たならば。

人類は、ようやく気付くだろう。
そんな人が、真に縋るべき救世主だと。

__________


声が枯れるまで叫んだであろう、「助けて」と呼ぶ声が。
もしも、聞こえていたら。
もっと、早く聞こえていたら。

「お前を独りで泣かせずに済んだのだろうか」

涙に濡れた頬に触れ、痛々しいほど赤くなった眦に唇を寄せる。
せめて、夢の中では過去を忘れて笑顔でいて欲しい。
そう願い、贖罪を請いながら、抗えない時の流れを罵った。

__________


拝啓、親愛なる人。
前略、私は相変わらず生きています。
中略、いつかまたお会いしたいと存じます。
後略、最後にひとつだけ言い忘れていたことがあります。
追伸、あなたのことが大好きです。

__________


見送ることは、とても辛い。
身を切られるような痛みを伴うけれど。
きちんと向かい合って、送ってあげれば。

「ほら、ね。あなたの胸には光に包まれた思い出がそんなにも溢れている」

人間は命の温かさを自然に感じ、笑顔が戻ってくるものなんだよ。

__________


ミルクティーに似ているなって思った。
ほんのり紅茶の苦さがあるのに、後に残るのはミルクの甘味。
冷たくても熱くてもそれは変わらなくて。
君が上質な茶葉だとしたら、こんな味がするのかなって思ったんだ。

__________


歓喜する心を抑え、男は美しい天使の頬に手を添えて口付けを落とす。
神よ、どうか彼と彼が愛するすべてのものに加護を。
祝福を。
他人のために祈る優しく愛しい天使に、どうか…。
男はただただ、溢れてくる想いに震えた。



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