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頁のない物語 #18

ひらり、と何かが落ちて。
思わず目で追ったそれに伸ばした手は、触れる手前で止まる。

「これ…オレ、の昔の写真…?」

表面が少し日焼けしているそれに映っていたのは、紛れもなくオレで。
司教の手伝いをしている時なのか、祭服を着ている。
自分の記憶にないその写真。
どうしてこんなところに覚えのない写真が、と首を傾げてしまう。

「アル、」
「あ、ハイン」
「この辺りに写真が落ちていなかったか?」
「え?」
「あぁ、それだ」

ありがとう、とオレの手から写真を引き抜き、仕事で使っている手帳に挟んでいる。
まるで、最初から自分のものであったかのように。
あまりにも自然なその行為に、質すのも忘れて思わず小さく笑ってしまった。

__________


「あ、雪…」
「アル、」

大丈夫か、と饒舌に語りかけてくる彼の瞳に笑いかける。

「もう怖くないよ。だって、こんなに綺麗だと思えるようになったから」
「…そうか」

あれほどオレを思いのままにしていた恐怖は、今は手も出せずにこちらを見ているだけ。
ほら、今だって。
彼が居るだけで、あれほど怖かった白い闇が美しく見えるのだから。

__________


尽く奪われ、失い、痛みに膝を折り、泣き叫び、傷付いて傷付いて。
血を流す少年の背中を押した。
残酷なことだと知りながら、背中を押した。

「大丈夫だ。大丈夫だから、諦めるな」

生きることを…生きてくれることを。
痛みに耐えることを…痛みに耐えてくれることを。
諦めるな。

__________


畏れこそが、神の本質。
絶対的な存在感と威圧感に人間は膝を折り、手を合わせ、祈る。

人間は武器を持たない無力な存在です。
だからどうか、この平穏を奪わないでください、と願う。

「でも、そんな存在に喧嘩を売る人間だって居る」

神の本質に跪くことなく、剣を抜く人。
そんな人とならば、何だって怖くないと思うオレは愚かでしょうか?

__________


まだ幼いあなたに伝えておきます。
唐突かもしれないけれど、これがきっと最期だから。
あなたを大切に想っている、と。
あなたに出逢えたこの世界が、愛しい、と。

「さようならは哀しいけれど、でもね…私はあなたを愛せて幸せでした」

__________


憎しみが哀しみを生み、怒りが恨みを従えてやって来ます。
それは疫病のように瞬く間に大地を穢し、正論の暴力の連鎖を引き起こしました。
これが、この世界の正体です。
あぁ、それでも。

「あなたと生きることができるのなら、それでもいいって思うんだ」

隣に愛する人が居る。
たとえ近くに居なくても、そういう人が居るなら。

「それだけで、この世界もあながち悪くないって思えるんだ」

__________


看よ、新しい朝が生まれた。
終末論を哂うように、人々の歓声が空を劈く。

「昨日と何も変わらないというのに、忙しないものだ」
「変わらないことに安堵しているんだよ」
「安堵?」
「だって、今日が来る保障なんてなかったんだから」

人々は祝杯を掲げ、克ち取った“今日”に歓声を上げる。
あぁ、看ているか。
この強かな人間の姿を。
終末に立ち向かうこの美しい姿を。

__________


神に祈ったところで、届きはしない。
声が枯れるまで泣き叫んだとしても、届きはしない。

「こんなこと、無意味だと分かっているのに…」

顕在を信じるのは止めた。
手を伸ばすのも、縋りつくのも、求めるのも諦めた。
けれど、それでも…。

「…誰か…誰か、助けて…」

行き場を見つけられずに彷徨う言葉が、いつか。
どうか、“誰か”に届きますように。

__________


舵を切れ。
波濤に怯むな。

「顔を上げろ。胸を張れ」
「でも…」
「雑音に惑わされるな。真偽を見極めろ」

大海原に飲み込まれることなく、足掻け。
そう言った彼の真摯な眼差しはとても強くて。
帆が、風を孕む。
波しぶきが、船首で弾ける。
大きな波が、背を押した。

__________


朝積みの薔薇で花冠を織る。
穢れを撥ね付ける、拒絶の色。
あぁ、どうか。
どうか、あらゆる災厄を拒み、彼を護りますように。

「何をしているんだ。アル」
「花冠を」
「花冠?」
「そう。これをハインに」

祈りと願いを込めて織り込んだ純白の花冠。
それは、不遜な王には相応しくないものだけれど。
あぁ、どうかこの禍々しい世界から彼を護りますように。



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